静岡大学東部サテライトだより

静岡大学東部サテライト「三余塾」の記録・お知らせ

20241021 FMIS「集まれ!静大三余塾」ゲスト 静岡大学辻本先生

2回目の出演となる辻本先生

10月21日のFMIS「集まれ!静大三余塾」のゲストは2回目の出演となる静岡大学地域創造教育センターの辻本先生。専門が民俗学ということで、前回

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民俗学とはどういうものかというお話でしたが、今回は最近の民俗学ということで、今まさに民俗学者がどんなことをやっているのかというお話をしていただきました。

ネット怪談と民俗学

私の先輩の研究者の本が近日発売になるのですが、そのタイトルが「ネット怪談と民俗学」。「きさらぎ駅」といったネットの掲示板やSNSで語られている話なども民俗学の対象になるといったことが最先端の研究では進められています。「学校の怪談」も実は民俗学者が有名にした言葉で、「都市伝説」も実はアメリカの民俗学者が考えた概念です。

介護民俗学

介護や福祉といった領域でも民俗学が取り入れられています。六車由実さんという沼津市でデイサービスをやっていらっしゃるこの方は、民俗学者でもあり、介護民俗学という言葉を提唱されています。昔のことなどをインタビューする民俗学の「聞き書き」の手法を介護現場で実践されていて、施設の利用者の方が昔の体験とかを若いスタッフに教える、そうすると普段の助ける助けられるの関係が逆転する。自分も教えられることがあるということで、現場の雰囲気が良くなると六車さんの本には書かれています。どの本にも書いていないような昔の行事とかの話を聞くことができる、介護現場というのはまさに民俗学の宝庫なんだということです。

精神疾患民俗学

精神疾患とか精神障害と言われる領域にも民俗学が使えるといわれています。有名な症状で言うと手を洗いすぎてしまうといった「強迫症」。4や9という数字が怖いとか、特定の行動を繰り返さないといけないとか。そうした強迫症民俗学的に研究できないかと思っています。同じやり方でその通りにやらないと気持ちが悪くなるというのは、儀式とか行事とか私たちが普通にやることの中にもあります。精神疾患というものを理解できない対象と思われがちですが、民俗学として扱ってきた毎年繰り返し行う行事とか儀式とかに実は地続きな部分もあるのではと思います。例えば「狐憑き(きつねつき)」という表現も、精神疾患を病気として隔離するのではなく、動物のせいにすることで受け止めてきた、過去の人たちの知恵なのかなと思ったりもします。
10月13日から18日は強迫症啓発週間なのですが、強迫症は病院に行くまでにとても時間がかかる病気です。知識とか理解がまだ進んでいない病気なので、できればこういう機会に知っていただいて理解が進めばいいかなと思っています。

 

強迫症は50人に1人が発症する病気とのこと。なかなか理解の進まない精神疾患について、民俗学を通して理解が進むことで病気に悩む人たちやその周囲の人が少しでも生きやすくなるとよいなと思いました。辻本先生、ありがとうございました。