静岡大学東部サテライトだより

静岡大学東部サテライト「三余塾」の記録・お知らせ

20240126 伊豆市地域づくり協議会勉強会 内山先生講演

大東地域づくり協議会の人形たちも勉強会に参加

地域福祉を専門としている内山先生。地域福祉を考える際の「地域」という範囲を小学校区くらいの大きさと考えています。東部サテライトのある伊豆市では、小学校区を基本とし、地域の伝統行事の継承や工夫した地域づくりで活力に満ち住みやすい地域を作ることを目的に作られた組織である「地域づくり協議会」があります。

1月26日、東部サテライトが入居している狩野ベースにて、伊豆市で活動している9の地域づくり協議会(西豆地区、大東、東小学区、湯ヶ島地区、伊豆やつおか、熊坂小学区、月ヶ瀬学区、中大見、土肥・小土肥)の代表の方が集まり、内山先生が「地域福祉の観点からみたまちづくりの取組み」という講演をしました。

開会の言葉として、1月1日におきた能登半島地震を受け、伊豆半島もいつ大きな災害がおきてもおかしくなく、避難所運営などにおいて、地域のつながり、福祉の理解が必要であることから、今回の勉強会の開催したという伊豆市地域づくり課長山口様からのあいさつがありました。

講演「地域福祉の観点からみたまちづくりの取組み」

1地域の現状と課題
2今、地域に何が求められているのか?
3活動事例紹介
4これからの地域づくりに必要な視点や考え方
5私たちが取り組めること
という流れでの講演でした。

1地域の現状と課題

伊豆半島では、深刻化な少子高齢化の進行と人口の減少が進んでおり、ひきこもりやヤングケアラー、子どもの貧困といった問題もおきている。とくにひきこもりについては、40~50代の男性が多く、把握が難しいため、支援が行き届かない。
課題をチャンスにポジティブに考え、喜びを増やすように福祉に取り組まないと持続していかない、そういう視点が求められている。
多くの人が高齢になったら、体の自由が効かなくなったら「行政の福祉サービスに頼ろう」と思うかもしれない。先日も能登地震による大きな被害があったが、実際にそうなった時に地域とのつながりを全く持っていないと、どこに避難したら良いのかさえ分からないという状況になる。災害時には行政の福祉担当の方もすぐに駆けつけることができない。
2018年7月、岡山県真備町西日本豪雨により、福祉サービスを利用していた方が、避難場所が分からないといった状況で、災害の犠牲になってしまったということがある。福祉サービスはとても重要だが、それと同じく地域のつながりが大事で、介護護サービスが縮小される中、地域で互助力でともにいきることがより必要になっているということでした。

2今、地域に何が求められているのか?

伊豆市のまち・ひと・しごと創生第2期総合戦略の中にあげれられている「個性豊かで活力にみちた地域社会の形成」がみなさんの活動と深く関わってくる。地域づくり協議会という組織があるのは全国的にも珍しく、それに予算もつけられている。この予算をうまく活用して、持続可能にしていく準備が必要である。
人口減少、高齢化が進むと、様々なサービスが縮小していく。今後、住み慣れた地域で暮らしていくには、地域の課題は地域で解決し、元気な高齢者が活躍していくといった多機能型の地域運営組織が必要となっていく。そのためには、「小さな拠点づくり」「持続可能な地域運営」の2つと、必要なものを地域でつくる「地消地産」がキーワードとなる。

3活動事例紹介

  • 大東地域づくり協議会の居場所サロン
    元保育園の建物を使い、カフェなどをおこなっている。マックスバリュの移動販売に合わせて場所を開放。開設までにはたくさんの苦労があったとのこと。今回、入り口と会場に飾られた等身大の人形は、大東地域づくり協議会の方が作ったもの。「かかし」の意味があり、人の少ないところに暖かさをということで製作されたとのこと。
    大東地域づくり協議会の方より
    女性が中心となっている活動の中、男性は果樹や花を植えたり、庭の手入れといった環境整備を担当している。特に桜が素晴らしく、主に80歳以上で集まる「花見の会」は地域での大きな楽しみになっており、80~90人も集まる。
  • 熊坂地域づくり協議会の高齢者向けサロン
    公民館にて開催、女性による「お世話クラブ」が活躍。体操やゲームをおこなっている。
    熊坂地域づくり協議会の方より
    人材不足でこれから続けていくにはどうしたらよいかという課題。ひきこもっている人を誘う難しさ、老人会に入ってもらうことも難しく、人づきあいが苦手な人も多い。短い時間でも笑いながら過ごす場は大切。女性でつくられた「お世話クラブ」が高齢者に声を掛けてくれる。これは男性ではできないこと。
    例えば災害があったとき、自分が動けなくなったときにどうするか。向こう三軒両隣の関係構築を行政も一緒に考えてほしい。
  • 中大見地域づくり協議会の送迎サービス
    昼間に使用していない特養の車両を買い物支援に使用。必要書類や取り決めなどをしっかりと作成している。

内山先生も、大学ゼミでの沼津市千本浜における小学校を活用した多世代の交流活動を紹介。

toubusatellite.hateblo.jp

その他、全国や松崎町「蔵ら」の取り組みを紹介し、NPO法人や会社の立ち上げが、持続可能な地域運営につながると説明がありました。

4これからの地域づくりに必要な視点や考え方

地域課題への気付きや危機感を共有するためにも、住民アンケート、懇談会の実施し、
どういう地域を目指したいか、未来図を想像することが必要。活動をおこなっていく上で、ロジック「論理的」に考えることが大事である。何のための活動か、どういう成果が表れたかということを可視化していくことで、モチベーションがアップし、連携も取りやすくなり、助成金の申請などにも役立つ。

活動を論理的に整理していくためのシート

自立とは「自分らしく生きるために依存先を増やすこと」。人が喜ぶことで喜びの質が上がる、つまり、豊かに生きるということは人の喜びを自分の喜びとして感じることであり、そういう意味でも人はひとりでは生きていけない。「居場所」を通じて人がつながることはとても重要だということを話していました。

5私たちが取り組めること

静岡大学の学生が月ヶ瀬地区でおこなった防災のワークショップや、地域の中学生が廃校となった旧八岳小学校を使用し、移動支援を入れたマルシェの開催で高齢者の買い物支援を計画しているといった若い世代の活動を紹介。
ブログでも何回かお伝えしていますが、内山先生の活動として、地域の人が主役となる取り組みとして「ふるさと絵屛風」を紹介。現在、松崎町で進めていることもあり、この地域でも製作ができればというお話でした。

そして、この東部サテライトを「ゆるやかな学び場」として、広く地域の人たちに利用してもらえるよう、今後、ミニミュージアム設置の展望などを計画していることをお知らせしました。知りたいこと、話を聞きたい人、要望があれば教えてほしい、ということをお伝えし、講義は終わりました。

閉会後に質問にいらっしゃる方も。地域づくりへの熱心さを感じました。

質疑・感想

同じ伊豆市といえども、それぞれの地域で課題が異なる。そのためにも何が課題なのかのニーズの把握が急務となっているがニーズを把握する方法は?(地域づくり協議会の方より)
→全戸アンケートが望ましいが、答えられない人もいる。気軽に参加できるワークショップなど、対面の機会をつくる。子ども会とか、規模を小さくして話を聞いて地道に試していく。とにかく一度やってみる。

サロンをスタートするのに際し、要望を踏まえるのにアンケートをおこなった。アンケートの内容は、自分が出かける範囲とか、どんなことやりたいかとかで、その結果をもとに活動している。今日の先生の講義を聞き、この活動がどこをめざしているのかという目標が分からなくなっているので、みんなで話し合い、その目標に対して、自分が今どこにあるのか分析したい。(地域づくり協議会の方より)

居場所や出番が必要という話があったが、伊豆市では住民主体、高齢者主体の活動が多くあり、市としても居場所づくり、プラットフォームづくりに注力している。子育て中のお母さん、社協のボランティアなど色々な活動があるが、担い手不足で活動の継続が難しく単独での活動の限界を感じる。そのためにも、地域でどんな活動を知り合う場が必要。(伊豆市福祉相談センターの方より)

 

会が終わった後に、内山先生により詳しい話が聞きたいと訪ねていらした方もいらっしゃり、地域づくりに対するみなさんの熱心さを感じました。今後もこのような勉強会を通して、東部サテライトが地域の開かれた学びの場となっていけるようにしたいです。