静岡大学東部サテライトだより

静岡大学東部サテライト「三余塾」の記録・お知らせ

20230716 ジオカフェ「いのちの点灯夫であれ」 河原さん&内山先生対談

熱気あふれる屋外の会場、河原さんの絵で少し涼しい気持ちに。

8月29日まで伊豆市修善寺にある「ジオリア」で開催されている企画展「ひかりを灯すしま」。順天堂大学病院理学療法士の河原一剛さんが、自身の担当する患者さんやそのご家族とのやりとりや思い出を描いた絵本「ひかりを灯すしま」を中心とした、医療×絵本×伊豆半島をテーマにした展示です。
7月16日(日)に、この企画展に関連したギャラリートークジオカフェ「いのちの点灯夫であれ」が開催されました。進行役はジオパーク研究員の遠藤さん。前半は絵本作者である河原さんが展示の解説をし、後半は地域福祉を専門とする東部サテライトの内山先生との対談という内容でした。

病院の写真を中心に伊豆の風景や患者さんの作品が並びます。

展示の解説

病院の写真が真ん中にあり、左には西伊豆の風景、下には中伊豆のワサビ田、右には遠くに都心が見える風景。伊豆半島のど真ん中に、順天堂大学病院があるということの価値を伝えたいという意味があるそうです。
絵のあちこちに描かれているオレンジ色の「ひかり」や「街灯(外灯?)」。街灯は「街灯は自分ためだけでなく、人のために灯すもの」という好きな言葉あるとのことで、ひかりは、はっきりとはおっしゃっていなかったように思いますが、「いのち」を表しているのだと思います。
伊豆半島の成り立ちからのストーリーと患者さんのストーリーにシンクロする部分を感じ、「医療×絵本×伊豆半島」という掛け算をして伝えていきたいということでした。

絵が持つ人と人を結ぶ力をあらためて気付かされる時間でした。

対談より

絵本を読むと分かるのですが、かなり大胆なイメージの絵。カルテを見ただけでは分からない患者さんのこと、実際に話をして分かることをメモだけだと記憶に残らないことから、絵で表現をしているそうです。コロナ禍でお見舞いが制限されている中、家族に会いたい、家に帰りたい、という患者さんの気持ちを河原さんは深掘りし、絵で患者さんと家族、そして病院のスタッフのみなさんをつなげてきました。
理学療法士という仕事と絵を描くということの関係ですが、その人を深く知っていくことで、置かれている環境に気が付く洞察力が身につくということでした。
これはどのような仕事にも、普段の生活にも関わることですが、「人に何かを伝えたいときは、その人のことを知らなければ伝えられない。」という河原さんの言葉が印象的でした。
絵の持つ力ということで、内山先生も取り組みを始めている「ふるさと絵屏風」を紹介。自身が専門としている「福祉」は高齢者のイメージがあるかもしれないが、みんながよりよく生きるために幸せを増やしていくことであり、伊豆半島をより輝く「しま」にしていくには、みんなが集うことのできる場づくりが大事というのが、河原さんと内山先生の共通の思いでした。
ジオパークとしては、絵本を中心としたイベントというのは初めてということでした。ジオというと地層や石、というイメージが強いですが、文化や地域固有のアイデンティティといったものもジオの重要な構成要素。地域の価値あるものを発信していくという意味で、絵本とジオパークの親和性はあるということで。今後、伊豆のジオを発信する絵本ができるかも…。

菊地豊伊豆市長に「ひかりを灯すしま」を贈呈

「いのちの点灯夫であれ」という印象的なキャッチフレーズ。点灯夫とは街灯に点火してまわることを仕事とした人のことですが、誰もが自分のできることで、誰かのいのちに灯りをともすような、そんな風になれたらいいなと思いました。
対談の途中で暑さを吹き飛ばすために配られた「ところてん」。「梅ソーダ」「はちみつレモン」「黒蜜きなこ」から選べるという楽しさと美味しさでした。展示はジオリアで8/29までです。