静岡大学東部サテライトだより

静岡大学東部サテライト「三余塾」の記録・お知らせ

20240520 FMIS「集まれ!静大三余塾」ゲスト 美しい伊豆創造センター 太田さん

キンメダイのつるし雛も!

5月20日のFMIS「集まれ!静大三余塾」、今回お話をいただいたのは、美しい伊豆創造センタージオパーク推進部の太田さん。東伊豆町稲取の出身ということで、東伊豆町のあまり知られていない食や文化についてお話いただきました

東伊豆町の桃の節句

東伊豆町といえば「雛のつるし飾り」。現在は、ひな壇の脇に飾られているスタイルが多いが、古くは江戸の後期、「つるし雛」自体がお雛様として飾られていた。「つるし雛」が昔からの名称で、「雛のつるし飾り」はイベントために付けられた名称。戦前、裕福ではない家庭が多く、着物の端切れなどで、お母さんやおばあちゃんが手作りをしていたもの。戦後に一度すたれたが、平成5年に稲取の婦人会が復活させた。残っていたつるし雛から、型紙をおこし、会員のみなさんで手作りをしたということです。

稲取の桃の節句の風習として、重箱にごちそうを詰めたものを女の子が持ち寄ってみんなで食べるというものがあり、重箱の中身は「黄飯(きめし)」。黄飯はお祝いの時にたべるもので、くちなしで黄色く色を付けたご飯。他には、卵に色をつけて箸を巻いてしばり、梅の花びらのようにしたものも入れるとのこと。

伊豆稲取といえばキンメダイ

お祝いの席で食べるものとしては、稲取特産のキンメダイも欠かせない。「腹を割って付き合えるように」という意味で二匹の金目鯛の煮つけを腹合わせにして盛り付けたものを出す。キンメダイの煮つけは、煮てから冷ますことで味が染みるので、冷めたものを出すことが町では常識だが、そのことで観光客の方から「冷めている」というクレームがあったことも。今は、しゃぶしゃぶなどでキンメダイを食すこともあるが、脂が強いことから昔の人は煮付け以外では食さなかった。
キンメダイは深海200m以下で採れる魚。プレートの境界(フィリピン海プレートと太平洋プレート)という、日帰りでキンメダイを採ることのできる絶好の漁場があることからキンメダイが稲取で水揚げされている。キンメダイは海の中では銀色で、釣ったばかりの時も銀色であることから漁師さんは「ぎんでえ」と呼んでいる。

げんなり寿司とはんまあさま

稲取で祝い事のときに食べる地域特有のものに「げんなり寿司」がある。一合の酢飯を直方体にし、人参の煮たものをはさみ、キンメダイの紅白のおぼろ、椎茸の煮たもの、薄焼き卵、長方形に切ったマグロの刺身をのせたもの。その大きさに、食べるだけで「げんなり」してしまうことから、その名前がついたといわれている。

地域特有の行事としては、9/9の重陽(ちょうよう)の節句の行事である「はんまあさま」がある。漁師の家庭でおこなわれていた行事で、前日の9/8に海岸に生えている「ハマユウ」の葉で武士とイカ、サンマの形をつくり、一晩まつったものを翌日、「イカとサンマにならっしぇよ」と言いながら海に流す。
言い伝えとして、不漁の時にかもめが集まっている場所があり、魚かと思って見に行くと亡くなったお侍さんたちで、そのお侍さんを町の人が供養したところ、それを境にイカとサンマが採れるようになったことから、この行事が始まった。
このはんまあさまは、地域の小学生の課外授業にもなっている。

東伊豆の魅力は、海と山が近く、美味しいものがたくさんあること。ぜひ、東伊豆町を訪れてください、とのことでした。