静岡大学東部サテライトだより

静岡大学東部サテライト「三余塾」の記録・お知らせ

スリランカの出張報告(内山 仕事編)

5月16日から23日までスリランカに出張に行ってまいりました。目的はJICAが実施する「コミュニティにおける高齢者向けサービス運営能力強化プロジェクト」への支援を行うためです。私にとっては2回目のスリランカ(一回目は15年ほど前に数日間滞在)でしたが、全てが刺激的で驚きの連続でした。

 いくつかのジャンルに分けて報告したいと思いますが、まずは真面目な仕事のお話から。スリランカは現在高齢化率は12%程度と日本の29%と比較するとかなり低いものの、今後急速に高齢化が進み、それに伴い非感染性疾患や認知症、障害を抱えて暮らす人が増加することが予想され、そのための社会サービスの必要性が高まっているそうです。プロジェクト活動のなかで、私からは福祉分野でインプットをということで、今回は特に介護予防的な活動について日本の事例紹介や意見交換等を行いました。

 

はじめに、首都のスリ・ジャヤワルダナプラ・コッテから車で40分ほどいったAthurugiriyaという場所にある郡病院を視察ました。ちょうど毎週金曜日は高齢者の活動があるということで、早速現場を見させてもらいました。そこでは、日本の荒川区で行われている「ころばん体操」をまねて、高齢者が25名ほどが身体を動かしていました。評判はとてもいいようです。

皆で真剣に体操してます

次に、認知症の当事者と家族を対象にしたプログラムも始めたということで、そちらの見学も行いました。日本でもコグニサイズという頭を使いながら身体を動かす運動が行われていますが、スリランカでも認知機能を刺激するためのプログラムの普及が始まっているようでした。病院の医師が非常に積極的にかかわっており、参加している高齢者は皆とてもいい笑顔でした。

 

プロジェクト活動は3つのパイロットサイトで実施されており、今回はそのうちの2カ所のサイトでモニタリング報告会が実施され、そのときに私から30分程度日本の紹介や意見交換をする時間がありました。現在、プロジェクトでは医療と介護の両側面から日本の事例等を参考に様々な取組みを試みているところで、例えば、コミュニティセンターに図書館を設置することや高齢者の個人事業活動などを展開する動きがあります。ただ、スリランカにはコミュニティレベルで例えば日本のような社会福祉協議会や地域団体があるわけでもなく、また保健師などの専門職も配置されていません。病院が主な拠点となり看護師や医師らができるだけアウトリーチでサービスを提供しますが、負担はかなり大きいのが現状です。

日本の事例で紹介できることがもっといろいろありそうです

また、今回は2カ所の高齢者施設を訪問する機会もありました。

1カ所は高齢女性のみが入所する施設で、様々な事情をもった65歳から94歳の人たちがドナーに支えられながら細々と生活しています。毎日することは、祈り、食事、おしゃべりで、月に1回アーユルヴェーダドクターの訪問があるそうです。

施設の入り口

部屋のなかの様子

施設の中庭には菜園もあるようです

ドナーから食事が届けられます

もう1カ所は国営の施設で、男女併せて26名ほどが生活する高齢者施設。ここもドネーションにより建設されたということ。認知症の人も入居しており、5名ほどの介護職員がケアをしています。

ここで皆でお祈りをするそうです

台所はとても衛生的できれいに管理されていました

スリランカについてまだよく分からないことだらけですが、今回の出張を通して感じたことは、行政の体制があまりにも脆弱すぎるということでしょうか。どの機関も職員が少なすぎるような気がします。この背景にはやはり国の財政が相当逼迫していることがが考えられます。2022年の経済危機は今もスリランカの至る所に影を落としているように思います。とはいえ、現場レベルでは地域の課題を真剣に考え、何とかしようと行動を起こす病院の医師やスタッフもおり、心強い存在です。

 

スリランカの人たちは皆笑顔が素敵。町を歩いていて目が合うと必ず笑顔を返してくれます。スリランカの人たちは敬虔な仏教徒が多く、寄付をする人が多いことからも、因果応報の教えを常に意識している様子がうかがえます。

政府機関の入り口には、それぞれの神様がまつられています